LLM-jp成果物のライセンスに関する指針
LLM-jpでは今後、成果物の公開に際し、下記の指針に則ってライセンス等を定めることとしました。
- 成果物には、原則として制限付きライセンスを採用しない。
- LLMやマルチモーダルモデル本体には、原則としてApache License 2.0を採用する。
以下ではこれらの決定に関する背景や、決定に関連する重要な情報を記載致します。
指針の決定に関する背景
大規模言語モデル(LLM)の利活用の拡大に伴い、その安全性や社会的責任に関する議論が活発に行われています。LLMは強力なツールである一方で、悪用されることで社会的に重大な影響を及ぼす可能性があります。このような利用を明示的に制限すべきであるという立場からは、ライセンス条項に特定の利用目的を禁止する形での対策を講じることがあります。たとえばResponsible AI Licenses (RAIL)では、条項内で利用例を制限することで倫理的な問題を回避しようとする方針が取られています。LLM-jpにおいても、特に高度な推論能力を有すると考えられる LLM-jp-3 172Bの公開に際し、用途の制限を含むライセンスを策定するといった取り組みを過去に行ってきました(※1)。
※1 https://llm-jp.nii.ac.jp/llm/2024/12/24/llm-jp-3-172b.html
一方、こういった取り組みに対しては多様な考え方が存在します。LLM-jp-3 172Bのライセンスについても、公開後に利用者の側から様々な意見が寄せられました。これらの動向を踏まえ、LLM-jp内部でも多くの議論がなされ、今後の成果物の公開に関してのLLM-jpとしての考え方を策定することになりました。特にLLM-jpの活動においては、下記の点が重要な検討事項となりました。
オープンサイエンスとの整合性
LLM-jpは学術関係者を中心としたオープンサイエンスを実現する場として活動しており、LLM-jpの成果物についても広く社会に還元されるのが望ましいと考えられます。この観点では、用途によってモデルの利用が制限されるライセンスで成果物を公開することは、オープンサイエンスの趣旨からは離れるものと考えられます。
オープンソースライセンスの利便性
他者の成果物を何らかの形で応用する場合、成果物に紐づく契約やライセンスを法務の観点で解釈し、ユーザ側で使用に問題がないことを確認しなければなりません。独自、または広く共有されていない契約やライセンスの場合、それぞれの条項の適切な解釈のために、利用者に追加の時間的・金銭的負担を要求することになります。
オープンソースライセンスとは、一般には Open Source Initiative の公開する原則 (※2) に合致するよう構成された一連のライセンスを指します。成果物がオープンソースライセンスの下で公開されている場合、利用者側は同様のライセンスに対する業界標準の対処法を一つ知っていれば十分で、上記の負担が大幅に軽減されることになります。これは成果物の普及の観点では大きな利点となります。
※2 https://opensource.org/osd
制限付きライセンスの実効性
契約やライセンスの各条項は、実質的にはそれが守られることが保障されて初めて意味を成します。仮に成果物を何らかの形で悪用しようと考える者がいた場合、その利用を制限する条項が書かれていたとして、適切に遵守されるとは考えにくいです。
一方、正当な利用を考える利用者の立場では、たとえば禁止事項が指す範囲の曖昧性などにより、どのような使用法が条項に抵触するのかが必ずしも明確にならないことがあります。このような場合、最終的には利用者が成果物の利用を躊躇してしまうことになります。
つまり、過度な制限事項の追加により齎される効果は、その元々の意図に反し、正当な利用者を遠ざけ、不当な利用者を排除しないよう機能する可能性があります。
ライセンスの選択
上記の観点に基づき、LLM-jpとしては成果物に対して制限付きの契約やライセンスを原則として採用せず、免責範囲などの最低限明確にすべき事項が記載されたライセンスを採用することに結論しました。
特に、モデルの公開に際してはApache License 2.0を採用することとしました。これはOSIにより正式に認定されたオープンソースライセンスであり、LLM-jpでも過去の一部のモデルで既に採用しているものです。本議論により、原則として今後開発されるすべてのモデルがApache License 2.0の下で公開されることになります。
公正な利用のお願い
LLM-jpとしては上記の通り、成果物の利用に際して特段の制限を設けないことに決定しました。しかし一方で、LLM-jpの成果物が一般に許可されない、または非倫理的と見なされる行為に使用されるのは望ましくなく、避けなければならないと考えています。特に、次に列挙する行為は、LLM-jpの成果物が利用されるべきではないと考えているものです。
- 知的財産権の侵害
- 人権の侵害や名誉毀損行為
- 法務、税務、会計業務、医療行為など、資格を要する業務の代行
- その他、モデルを利用する地域の法令に基づく許可が必要な行為
LLM-jpの成果物は任意の分野で強力なツールになる可能性があり、利用方法によっては社会的・倫理的責任が伴います。利用者の皆様には、この点を十分に理解の上、慎重かつ良識ある利用をお願い致します。
免責事項
Apache License 2.0の下で提供される成果物には、他のオープンソースソフトウェアと同様に免責条項が適用されます。すなわち、LLM-jpは提供する成果物についていかなる保証も行いませんし、利用に伴う損害を賠償する責任も負いません。利用者の皆様は、自己の責任においてモデルを利用し、その結果を慎重に評価の上、ご利用ください。
本指針の適用範囲
本指針はLLM-jpによる成果物に対して一般的に適用されるものですが、他者による既存の契約やライセンスをLLM-jpが上書きすることを表明するものではありません。LLM-jpの成果物のうち、LLM-jp外部の成果物に依存し、それらの成果物に特別な利用条件が付されている場合、LLM-jpはそれらの条項に従う必要があります。このため、LLM-jpの成果物にも本指針に合致しないものが存在する可能性があることをご留意下さい。